長年Web業界に携わっていると、今はまさに大きな転換期だと実感します。
iPhoneの登場後、2010年代前半にスマートフォンが急速に普及しました。
PCサイトを縮小するのではなくスマホを優先して作るデザイン手法が定着し、2014年にAppleの公式サイトがレスポンシブ対応したのをきっかけに、モバイル対応サイトは急激に増えました。
さらに2018年には、Googleが検索順位の評価基準をモバイル版ページにする「モバイルファーストインデックス(MFI)」の順次展開を開始します。
しかし未だに、EC業界などではデスクトップファーストを引きずっているショップも少なくありません。
そして今、生成AIやAI検索が当たり前になったことで、モバイル対応はできていて当然の時代になりました。
現在はそれ以上に、AI(LLM)にとって読みやすく価値のあるサイトが評価される「AIファースト」の時代へ突入したといっても過言ではありません。
AIファーストの正体=「LLMO」
AIファーストとは、LLM(大規模言語モデル)が理解しやすい構造でWebサイトが設計されていることです。
これこそが、これからの時代に最も求められるLLMO(Large Language Model Optimization:大規模言語モデル最適化)の本質に他なりません。
これからのWeb集客や情報発信は、ユーザーが検索結果のリンクを直接辿るだけでなく、GoogleのAI Overviews、Perplexity、ChatGPTといった「AIの回答内で自社サイトの情報が正しく解釈され、参照・引用されるか」が成否を分けるようになります。
だからといって、身構える必要はありません。
LLMOでやるべきことはWeb本来のルールを守り、誠実に構築することです。
かつてのSEOハック時代のような「検索エンジンを騙す」小手先のテクニックは、一切通用しません。
AIクローラーを意識せよ
AIフレンドリーなサイトを構築する上で、最も意識すべきなのがAIクローラーの存在です。クローラーがサイトを巡回する際、いかに正確かつスムーズに文脈を解析できるかが勝負の分かれ目となります。
具体的には、以下の要素を1本の線で繋げることが重要です。
E-E-A-T
Googleがサイト品質評価で重視する「経験・専門性・権威性・信頼性」の指標です。
AIはネット上の二次情報を簡単に網羅できます。
だからこそ、「誰が書いた信頼できる情報か」「そのサイトにしかない独自の一次情報か」が強く評価されます。
セマンティックHTML
「意味を持ったタグ(header, article, navなど)」を使い、文書のレイアウトや見出し構造を正しく表現すること。
適切な構造化がないと、AIは文章の主従関係を正しく解釈できません。
コンテキスト
コンテキスト(文脈)は、AIが情報を参照・引用する上で最も重要な要素。
自社ブランドやコンテンツが「どのような意味軸で語られるべきか」を一貫した文章構造で伝える必要があります。
アクセシビリティ
高齢者や障がい者を含むすべての人が情報にアクセスできる設計。
AIクローラーはまさに「目が見えない高度なエージェント」です。適切な画像ALT(代替テキスト)や音声読み上げを意識した設計を行うことが、そのままAIに対する正確な情報伝達へと繋がります。
Core Web Vitals
LCP(表示速度)やINP(操作性)、CLS(視覚的安定性)などUXの基本指標。
AI検索時代においても、クローリングの効率やユーザー体験の基盤として欠かせない要素です。
LLMの「トークン」を削減せよ
AIはテキストを「トークン」という単位に分解して解析します。
いくらページに膨大な情報を詰め込んでも、処理容量(コンテキストウィンドウ)を超えてしまっては意味がありません。
いかに効率よくクローリングさせるかが、LLMOを推進する上で鍵となります。
代表的な3つのトークン削減・最適化アプローチは以下の通りです。
構造化データ(JSON-LDなど)
いわば「AIに渡す名刺」です。コンテンツの意味や属性を正確に伝え、リッチリザルト表示やAIへのスムーズな情報伝達を可能にします。
llms.txt
「AIに渡す全体案内図」です。サイトの主要な構造や要約をマークダウン形式でまとめたファイルで、AIクローラーがサイトの全容を迅速に把握する手助けをします。
.md(マークダウン)ファイル
HTMLとは別に、各ページの要約や本文を軽量な .md 形式で用意し誘導する手法です。余分なデザイン用タグを挟まないため、AIはトークンを消費せずにページの本質を理解できます。
最後に:LLMOがもたらすもう一つのメリット
ここで紹介した手法には、使用するプラットフォームによる制限もあります。
例えばShopifyではルートディレクトリの直接操作ができないため、llms.txt の導入にアプリが必要だったり、.md ファイルの設置が難しかったりするケースもあります。
しかし、LLMOを意識してサイトの構造化を進めることは、外部のAIに発見・参照されるだけでなく、「自社サイト内にAIチャットボットやFAQ検索(RAG)を導入する際にも、そのまま高精度に機能する」という大きな副産物を生みます。
最も大切なのは手法そのものではなく、「AI(LLM)も1人のユーザーである」と意識することです。
どんなにかっこいいサイトであっても、AIは見た目のデザインを評価しません。
自動再生される動画や過度なアニメーションは自己満足になりやすく、AI以前に一般のユーザーにとってもストレスになることがあります。
過剰なjQuery依存や最適化されていない日本語ウェブフォントも、サイトを重くする大きな要因になりがちです。
AIファースト、そしてLLMOの本質は、決してAIに媚びることではありません。
「AIにとって読みやすいサイト」を追求することは、巡り巡って「人間にとっても圧倒的に使いやすく価値のあるサイト」を作ることと同義なのです。
この記事を書いた人
森田 王(もりた おう)
株式会社テンカ 代表取締役 / ウェブクリエイター / グラフィックデザイナー / Shopifyパートナー / 一般社団法人 岐阜北法人会員